小説『俺俺』星野智幸 著

漫画と映画の話をしたので、小説の話もしてみます🤔

自分のwant toをあらわしていると思う小説は、『俺俺』星野智幸 著(新潮文庫)です。

KAT-TUNの亀梨和也氏主演で映画にもなっています。

日常に不満を持ちながらも平凡な生活を送る青年・永野均が、なりゆきでオレオレ詐欺をしたことから、自分の知らない「俺」が増殖し、やがて「俺」同士が互いを削除しあうという異色サスペンス。

映画.comより
https://eiga.com/amp/movie/58213/

ただ、文学の映画化にはありがちなことですが、ラストシーンが小説とは違っていました。

小説のラスト数行が私にとってはほぼすべてだったもので、以下にネタバレ引用します。⊂( ̄(工) ̄ )⊃📙

"そうして気がつけば、俺らは消えていた。誰もがではなく、ただの自分になっていた。俺と他の人とは、違う人間だった。

そのことに気づいたとき、俺はそこはかとなく寂しかった。もう、誰かを自分のことのようにわかることはないんだなあ、と感傷的になった。いや、と俺は考え直す。相手を自分のことのようにわかろうとし続けていれば、たまにはわかるのだ。その程度でいいのだ。すべて同じ自分であるがゆえに、自分が消えてしまうことのほうが、ずっと恐ろしかったはずじゃないか。

何で話すかというと、あの悪夢みたいな俺俺時代を覚えておいてほしいからだ。俺はもうジジイだから、頭も弱くなっちまって、具体的な出来事はよく覚えていない。でも何をしちまったかは、今でも体が覚えている。その、体が覚えていることを、おまえたちにも自分の感覚として覚えておいてほしいのだ。

時代が違うから俺たちには関係ない、なんて思っちゃいけない。これは他人事じゃない。おまえが忘れたとたん、おまえたちもたちまち俺俺になっちまう。俺俺は、おまえたちが現在や昔を見ないようにして忘れちまうことを、こっそり待っている。だから頼む、覚えておいてくれ。そして自分たちが誰だか、忘れないでくれ。"

単行本250-251ページより

説明や解釈を加えようとするどんな言葉も蛇足にしかならないような、圧倒的な文章だと思います。

コーチングでは「空」や「縁起」について考えるときに大切にしている考え方です。

参考になりましたら。φʕ•ᴥ•ʔ

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